過払い金返還請求の実務(その2)です。
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二 最高裁判例の概観
最近重要な裁判例が毎年のように出ておりますので、過去の最高
裁判例の重要なものを今日のテキスト(以下、省略)でまとめてみ
ました。ご承知の方がほとんどだと思いますが、復習の意味で簡単
に説明させていただきます。
テキストの第2の?から?で昭和三九年から昭和四四年までの
最高裁判例を掲げていますが、これらの一連の最高裁判例により過
払金返還請求が可能であるということが確立されたわけです。利息
制限法一条二項では「債務者は、前項の超過部分を任意に支払った
ときは、同項の規定にかかわらず、その返還を請求することができ
ない。」と規定されており、昭和三九年の最高裁判決(最大判昭和
三九年:月一八日民集一八巻九号一八六八頁)以前に大きく議論
になっていました。旧利息制限法にも同様の規定がありまして、そ
の時代からずっと争いがあったのですが、同様の規定が現行の昭和
二九年制定の利息制限法一条二項で入ってしまいましたので、同じ
ような議論が以降も続き、最大判昭和三七年六月十三日(民集一六
巻七号一三四○頁)では、超過利息を元本に充当できないと判断さ
れてしまいました。しかし、そのわずか二年後にひっくり返すとい
う歴史的な転換を果たした最高裁判決が最大判昭和三九年十一月十
八日(民集一八巻九号一八六八頁)であり、債務者が利息制限法所
定の制限を超える利息損害金を任意に支払ったときであっても、そ
の制限を超える部分は元本に充当されるといったわけです。
最三小判昭和四三年一O月二九日(民集二二巻一○号二二五七
頁)ですけれども、超過利息については充当の特約の趣旨に従っ
て、次順位に充当されるべき債務であって有効に存在するものに充
当されるといっています。
最大判昭和四三年十一月十三日(民集二二巻一二号二五二六頁)
は、超過利息を元金に充当していって元金がゼロになった場合、そ
の後に払った超過利息の返還請求が認められるのかという点につき
判断したものです。これはストレートに利息制限法一条二項の返還
を請求することができないという条項に抵触するようにも思えるわ
けですけれども、この点について、いったん元金がゼロになってし
まったということは、その後は債務は存在しないのだから、それ以
上払った分については、不当利得の返還を請求できるとして不当利
得返還請求を認めたわけです。.,
最三小判昭和四四年十一月二五日(民集二三巻一一号二一三七
頁)では、利息・損害金を元本と一括して払った場合であっても超
過利息の返還請求をすることができると判断しました。
このように、昭和三九年から昭和四四年の一連の最高裁判決で、
利息制限法に違反した超過利息は元金に充当され、元金がゼロにな
った後に支払った利息については全額返還を求めることができると
いうことが確立されました。基本的にはこの四つの最高裁判決に基
づいて現在も運用されています。
さらに、昭和五十年前後ぐらいからでしょうか、貸金業者の違法
な取り立てが社会問題になりました。例えば貸金業者が押しかけて
玄関に紙を貼り付けるとか、怒鳴りつけるとか、そういうことが頻
発いたしまして、それを収めるために昭和五八年に貸金業規制法が
できたわけです。ここでは、貸金業者に対する規制を強化し、さら
に出資法の上限利率も段階的に引き下げることになりました。それ
と引き替えということだと思いますが、貸金業規制法四三条でみな
し弁済の規定が導入されました。すなわち、一定の要件を満たせ
ば、利息制限法を超過する利息を払っても有効な弁済とみなす、こ
ういう規定が昭和五八年の貸金業規制法四三条で導入されたわけで
す。
以降の裁判では、四三条のみなし弁済の適用の有無について大き
な争いになってきました。最二小判平成二年一月二二日(民集四四
巻一号三三二頁)は、債務者が利息制限法を超過している利息であ
ると認識している必要はない、単に利息・損害金として払えぱみな
し弁済は成立するという判断をしました。
最一小判平成十一年一月二一日(民集五三巻一号九八頁)は、債
務者が貸金業者の銀行口座に振り込んだ場合は貸金業者は領収書を
交付しないことが多いのですが、銀行振込による場合にも一八条書
面、いわゆる受取証書の交付が必要であるとして、みなし弁済を否
定しました。 。
ここあたりまでが従来の最高裁判例でしたけれども、平成一五年
から一六年、一七年、一八年と毎年立て続げに重大な判例が出てお
ります。
テキストの第2(4)のロプロ(旧日栄)事件の判決は、過払金の充
当方法と保証料について判断したものです。
テキストの第2(5)のSFCG(旧商工ファンド)事件の判決は、
両方ともみなし弁済の適用を否定した判決です。
テキストの第2(6)の最三小判平成一七年七月一九日(民集五九巻
六号一七八三頁)ですが、平成一二年、一三年頃から、貸金業者に
対して取引履歴の開示を要求しましても、開示を拒否するという事
態が多発するようになりまして、それに対して、貸金業者は取引履
歴を開示する義務がある、開示しない場合は不法行為として損害賠
償をする必要があるという判断がされました。
さらに、平成一七年の一二月から平成一八年一月にかけてみなし
弁済に関して重大な判決が出ております。一つ目がテキストの第2
(7)の最一小判平成一七年一二月一五日(民集五九巻一○号二八九九
頁)です。リボルビング方式の場合であっても、みなし弁済が適用
されるためには、一七条書面に返済期間、返済金額などを記載する
必要があると判断しました。 .
二つ目がテキストの第2(8)のシティズ事件に関する最二小判平成
一八年一月一三日(民集六○巻一号一頁)と最一小判平成一八年一
月一九日(裁判所時報一四O四号一頁)で、みなし弁済の規定につ
いて判断したものです。契約書には、約定利息、すなわち、利息制
限法の制限利率を超過する利息を支払わなかったときにも期限の利
益を失うという条項が入っているのですけれども、シティズ事件判
決は、利息制限法の制限利率を超過する利息については支払わなく
ても期限の利益は喪失しない、それにもかかわらず、このような条
項が入っているということは、それによって返済を強要するもので
あり、強要されて行った返済については任意性がないから、みなし
弁済は適用がされない、こういうことをいったわけです。
テキストの第2(9)の最三小判平成一八年一月二四日(民集六O巻
一号三一九頁)は日賦貸金業者のものですけれども、みなし弁済に
ついてシティズ事件と同様の判断をしています。
(注)本稿脱稿後、最三小判平成一九年二月一三日(判時一九六
二号六七頁、判夕一二三六号九九頁)が下され、?貸主と借主との
間で基本契約が締結されていない場合において、第一貸付け過払金
は、その後、同一の貸主と借主との間に第二の貸付けに係る債務が
発生したときには、その貸主と借主との間で、基本契約が締結され
ているのと同様の貸付けが繰り返されており、第一の貸付けの際に
も第二の貸付けが想定されていたとか、その貸主と借主との間に第
一貸付け過払金の充当に関する特約が存在するなどの特段の事情の
ない限り、第一貸付け過払金は、第一の貸付けに係る債務の各弁済
が第二の貸付けの前にされたものであるか否かにかかわらず、第二
の貸付けに係る債務に充当されない、?商行為である貸付けに係る
債務の弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部
分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返
還する場合において、悪意の受益者が付すべき民法七○四条前段所
定の利息の利率は、民法所定の年五分と解する、と判示された。ま
た、最一小判平成一九年六月七日(最高裁ホームベージ)は、「弁
済金によって過払金が発生しても、その当時他の借入金債務が存在
しなかった場合には、その後の発生した新たな借入金債務に当然充
当されるものということはできない。しかし、この場合において
も、少なくとも、当事者間に上記過払金を新たな借入金債務に充当
する旨の合意が存在するときは、その合意に従った充当がされるも
のというべきである。」と判示している。